特集:そうだ、あの人に会いに行こう。 file:08 グラスフィッター・森 一生さん
思う存分 メガネトークがしてみたい!
そうだ、あの人に会いに行こう。
メガネのことは大好きだけど、それ以上にメガネの話をするのが好き。
そこで、これまでお世話になった人や、自分が好きな人に会いに行き、
思う存分“メガネトーク”をするインタビュー連載を始めました!
file : 08 | グラスフィッター 森 一生さん
SMAP中居くんのメガネ秘話から
笑福亭鶴瓶のトニーセイムまで。
「つるべのメガネが変わった……」
大阪人の自分にとって笑福亭鶴瓶の丸いメタルフレーム、通称“つるべメガネ”は永遠の定番。それが最近はセル系フレームを掛けてテレビに出演している……。仕掛け人はグラスフィッターの森 一生さん。森さんのお仕事はCMやドラマ、映画などで芸能人が掛けるメガネを提案すること。
「師匠のメガネはプロダクションからの依頼です。いま師匠には、すごくいいスタイリストさんがついていて、衣装もおしゃれで可愛い。なのに、メガネがずっと丸ぶちでもったいないなと思っていて。そこでトニーセイムの「TS-10504-166」を提案したんです。今までのイメージを崩さず、服に合わせやすい。なにより若く見えるでしょ。もう1本のウェリントン「TS-10218-085」は、師匠が『俺、こんなん欲しいねんって』ってご自身で選ばれたものです」
なるほど。ってことは、次に狙うのはタモさんのウェイファーラーですかね! ところで、何故グラスフィッターなるお仕事を始めたんですか。
「もともと僕はオプティシャンだったんです。20歳のときに京都のセレクトショップ『オーグリー(現・オーグリーラコンテ)』で働き、その後、代官山の『アバーロ』に移りました。今の仕事は『アバーロ』で働いているときからぼんやりと構想があって。例えば、CMやドラマなどに使うメガネをリースします。僕の作業はそれで終わりですが、オンエアを見るとメガネがズレていたり、いいメガネだけど似合ってなかったりして、『もったいない』と思って。だったら、自分が間に入ってなにかできることがあるんじゃないかと。そうして、『アバーロ』を辞めて京都に戻った後、再び上京してグラスフィッターの活動を開始しました」
森さんはフレームを調整するヤットコや簡易の視力測定ができるハンディレフなどを常備し、現場でフィッティングなどを行う。メガネに対してそこまで責任を持つからこそ、“動くメガネ屋”であり、グラスフィッターなのだ!
「……いや、すべてのメガネを現場でフィッティングできるわけじゃないんですけど(笑)。気持ちとしてそれはあります」
ちなみに、少し前に音楽番組の「カミスン!(TBSテレビ系)」でSMAP中居くんのメガネ姿が話題になったけど、その仕掛人も森さん。
「『カミスン!』は中居さんがスーツを着て、音楽番組だけどメガネを掛けてニュースキャスター風にやりたいと依頼があったんです。USHやデュアルなど日本のブランドを中心に、毎回メガネを変えていました。本人は存在感のある白系なんかも好きみたいですね」
……あっ、そうか。つるべ師匠と中居くんが司会の「ザ!世界仰天ニュース(日本テレビ系列)」で、たまに「あのメガネ屋と麻雀した」とか「友だちのメガネ屋が」って話が出ますよね? あれって森さんのことだったのか。
「いやまぁ、ご想像にお任せします。あんまり話すと、タレントさんと仕事をしているのを売りにしているように見えちゃうんで……」
大丈夫ですよ、実際に数多の芸能人のメガネに携わっているわけだし。今回は徹底的にミーハーでいきますから(笑)。
「安堂ロイド」の柴咲コウから
「S-最後の警察官-」のメガネまで。
引き続き、ただただミーハーに話を伺います。最近はどんなお仕事をしているんですか?
「日曜劇場『安堂ロイド~A.I.knows LOVE?~(TBSテレビ)』の柴咲コウさんのメガネに携わりました。柴咲さんはIT企業の広報役。感度が高いメガネもありと考え、アラン ミクリも提案しましたが、最終的にオポープの「OP-01-B04」になりました」
なるほど、キムタクのZoffは森さんの仕事じゃないんですね……って、どこまでも無神経ですいません。でも、柴咲コウのメガネ姿は二次元レベルの可愛さ!
「『安堂ロイド』の次に始まる日曜劇場、『S-最後の警官-』のメガネにも携わっています。向井 理さんと綾野 剛さんが主演で、まだ詳細は言えませんが、ドラマのなかでオークリーとアイシー! ベルリンが出てくるはずですよ」
だれだれ? こっそり教えてくださいよ……ダメ? では最後の質問。“メガネだけ”のスタイリングってどんな風に仕事を依頼されるんですか?
「例えば、今年の4月に放映されたドラマ『ブラックボード〜時代と戦った教師たち〜(TBSテレビ)』の場合。作品は3部作で佐藤浩市さんは先生の役、時代設定は校内暴力が激しかった1970年代後半です。当時の先生の雰囲気を出すメガネを用意してほしいと依頼され、BJクラシックコレクションの重厚感のあるサーモント「S-801-2」を提案しました。人と役、時代に合うメガネを選んでいますね」
それ見ました。無骨で昭和感があっていいなって思ってたんです。「あまちゃん」もそうだけど、時代によってメガネはサイズ感やラインに微妙な違いが出ますよね。それにしても、ドラマにはちゃんと森さんの名前がクレジットされるんだから凄いですよ。
「いや、僕としてはグラスフィッターとしてクレジットされたら凄いと思っていて……。いまは美術協力や衣装協力の枠で僕の名前が載っているので」
つまり、グラスフィッターという新たなカテゴリをつくりたいと。
「はい。過去に『ワイルド7』という映画で、演者さんすべてのメガネを僕が用意して、グラスフィッター森 一生のクレジットで載せていただきました。映画では、中井貴一さんがバートン・ペレイラ、椎名桔平さんが999.9、瑛太さんがファクトリー900、阿部 力さんがプロポデザインを掛けて登場します。2年ほど前の作品ですが、バートン・ペレイラはなかなか早いセレクトでしょ(笑)」
インタビューを終えて。
ともに関西出身ということもあり、森さんとは初対面1分で「この人とは話が合うな」と感じました。今回、初めてガッツリ話を聞きましたが、森さんの仕事はいわゆる雑誌のスタイリストとは“似て非なる”もの。門戸の狭い業界で難しいことやっているなって感心します。テレビや映画などのメジャーな世界で、ハウスブランドのメガネが登場するのはうれしい限り。これからも応援しています!
- 動くメガネ屋、グラスフィッターの活動記
- http://ameblo.jp/onelife2eye/