特集:そうだ、あの人に会いに行こう。 file:09 FACTORY900・青山嘉道さん

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思う存分 メガネトークがしてみたい!

そうだ、あの人に会いに行こう。

メガネのことは大好きだけど、それ以上にメガネの話をするのが好き。
そこで、これまでお世話になった人や、自分が好きな人に会いに行き、
思う存分“メガネトーク”をするインタビュー連載を始めました!

file : 09 | FACTORY900 青山嘉道さん

シルモドール・グランプリ受賞効果で
ヨーロッパ各国から問い合わせ殺到!?

イメージ画像 1 特集:そうだ、あの人に会いに行こう。 file:09 FACTORY900・青山嘉道さん 撮影:藤井たかの

未来のメガネがどうなっているのかを知りたいんですよ。10年後、30年後、100年後のメガネがどうなっているのか? それを追っかけないと何も変わらない」と青山さん。

イメージ画像 2 特集:そうだ、あの人に会いに行こう。 file:09 FACTORY900・青山嘉道さん 撮影:藤井たかの

2013年のシルモドール・サングラス部門でグランプリを受賞したFACTORY900の「fa-1111」。なかなかヒネくれたフレームです(笑)。

イメージ画像 3 特集:そうだ、あの人に会いに行こう。 file:09 FACTORY900・青山嘉道さん 撮影:藤井たかの

実現まで4年を費やしたテオとのコラボ、Theo by FACTORY900。“900らしい”ウェリントンの「kamikaze」とボストンの「Samurai」です。

「子どもの頃、親父がよく『小さな世界でもいいから1位をとるんだって』って言っていました。世界一ってのは親父の夢で、僕は必ずしも『シルモドール=世界一』だとは思っていませんが、なにかしらのカタチを残せたことは嬉しいですね。シルモドールは爺さんの代から三代続く青山眼鏡の“夢の通過点”だと思うんです」

FACTORY900が、“メガネ界のグラミー賞”といわれるシルモドールのサングラス部門で、グランプリを受賞したのは2013年の秋。日本人デザイナーのシルモドール受賞は、かの川崎和男(日本を代表するインダストリアルデザイナー)以来、2人目の快挙です!

「ありがとうございます! シルモ展(フランス最大のメガネ展示会)の初日に授賞パーティが行われるんですが、これは業界関係者なら誰でも参加できるもので、自分も過去に何度か誘われたました。でも、自分は『受賞する立場になって行くんだ』と決めていたんです。シルモ初出展から8年、ようやく舞台に立つことができましたよ(笑)」

8年ごしなら喜びもひとしおですね。受賞モデルの「fa-1111」は、まん丸レンズにフレームの上下を90曲げて、見る角度によって変化が楽しめるユニークなデザインになっています。ただ、日本のメガネ店からはお世辞にも評判がいいとはいえないモデルでしたよね。もっと言えば、ここ数年クラシックがトレンドになってから、FACTORY900のような近未来的な立体フレームはマーケットから外れてしまった。ぶっちゃけ、“売れない時代”もあったと思うんですよ。

「僕ら不器用なんで、自分たちのやりたいことしかできないんです。誤解を恐れずに言えば、“売れるためのアプローチ”は簡単だと思います。いま売れているものをマーケティングして、少しエッセンスを加えればいい。ただ、僕らがそれをやったところで、結果なりきれない。いっぱいひねってしまって、素直にできないんです、たぶんバカだから(笑)。それに売れ線をつくるのは悪いことじゃないと思うけど、今あるものをつくってもしょうがないじゃないですか。FACTORY900としては、“新しい売れ線”をつくりたい。僕らは過去よりも未来に向かいたい。誰も見たことがないような“未来のメガネ”をつくりたいんです」

“未来のメガネ”はいいフレーズですね。そして冬の時代があったとしても、ブレなかったことが受賞につながったと。ところで、受賞後は変化がありました?

「海外のプレス関係からの商品リース(貸し出し)が増えました。国で言うとオーストリアやドイツ、カナダ、フランス、チェコ、イギリスとか。ファッション関係の雑誌やWebマガジンの編集者から、ブロガーの方までいろいろです。日本ではメガネ業界以外の方からのお声がけが多かったです。革やバッグ、アパレル業界全般。先日、姫路でトークショーもさせていただいたんですよ」

なかなかいい感じじゃないですか。ちなみにテオとのコラボモデルみたいな新しい企画ってないですか?

「いや! そ、それはあるんですが、今まさに秘密保持契約を結んでいる最中で……いわゆるメジャーのヨーロッパブランドなんですが……ごめんなさい、まだ言えません! あと、次のミド展(イタリア最大のメガネ展示会)に初出展します!」

デザイナー・青山嘉道の
背景にあるものとは?

イメージ画像 2-1 特集:そうだ、あの人に会いに行こう。 file:09 FACTORY900・青山嘉道さん 撮影:藤井たかの

こちらが青山さんのデザインスケッチ。どう見ても漫画です。

イメージ画像 2-2 特集:そうだ、あの人に会いに行こう。 file:09 FACTORY900・青山嘉道さん 撮影:藤井たかの

青山さんがいちばん気に入っているモデルは「FA-204」。「ラフスケッチを描いてからほぼ一発でデザインが決まった歴代ナンバー1モデルです」。

FACTORY900の魅力といえば、立体感のある近未来的なデザインですが、これは好き嫌いがはっきり分かれると思います。正直、僕はデビュー当時あまりピンとこなくて、「デザインが若い」と思っていました。ただ、好きな人は同じモデルを3本買ったり、50本以上コレクションする人もいるわけで、その“中毒性”はどこからくるのかと。

「間違いなく万人向けじゃないないでしょうね(笑)。でも、良かれ悪かれ見た人の“ここに響く”んですよ(胸に拳をポンポンとあてながら)。なんかよくわからないけど、心に残るっていう。それってデザインとして重要なことだと思うんです」

言い方が悪いけど、ラーメン二郎みたいなもの? 好きな人はドハマりするけど、嫌いな人は頭っから否定するみたいな。で、僕が面白いなって思うのはFACTORY900のディテールがエヴァっぽいというか、アニメやフィギュアを連想させる。それはどこからきているのかなと。青山さん、アニメとか好きでした?

「子どもの頃からアニメや漫画は好きでしたね。中学のときにファイブスター物語に出会って、『なんだこれは』と衝撃を受けて、僕の世界観はガラリと変わりました。AKIRAや攻殻機動隊も好きでしたが。僕の中では士郎正宗といえばアップルシードかなと。あと絵を描くのが好きだったので、高校時代では美術部に入り、何を血迷ったのか東京芸大を目指した頃もありました(笑)」

青山さんのデザインスケッチを見ると、メガネだけじゃなく顔まで描かれているものがあって、まるで漫画みたい(笑)。そこから、デザインにどうつながるんですか?

「青山眼鏡に入ったときに、川崎和男さんがメイン講師の『SSID(鯖江市立インテリジェントデザイン講座)』に通いました。そこでデザイン論を叩き込まれまれたんです。ただ、僕にとっての師匠はプロダクトデザイナーの大正一哉さん。クルマやバイクなどのデザインをしていた方です。講座が終わった後も、毎週金曜の夜に集まって『デザインとはなんぞや?』を喧々諤々とやりあっていましたね」

なるほど。アニメや漫画にハマり、絵を楽しみ、デザイン論を学んだことが、今に結びついているんですね。FACTORY900 がヨーロッパで“クールジャパン”と評される理由がよく分かりましたよ。ミド出展もいいんだけど、それより安倍さんに頼んでクールジャパン戦略に盛り込んでもらいましょうよ!

インタビューを終えて。

青山さんは“求道者”だと思う。会うと必ずアツいデザイン論が始まり、内容が哲学的なところまでいって、また振り出しに戻って、ぐちゃぐちゃになって……要するに僕はまったくついていけない(笑)。きっと頭の中は常にデザインのことでいっぱいで、それを中心に世界がまわっている。ブレない人ってそうなんだろうな。

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