メガネコラム:002「イズモオプティーク」をご存知ですか? [前編]
メガネコラム : 002
「イズモオプティーク」をご存知ですか? [前編]
メガネに関するネタやメガネにあんまり関係のないネタも取り上げるこのコラム。
今回は日本で47番目に有名な県、島根県の「イズモオプティーク」に行ってきました!
正直、まったくノーマークでした。まさか出雲にこんな素敵なメガネ屋があったとは……。
こんなに小洒落れたメガネ屋が
島根にあっていいんですか?
雑誌の仕事をしていると、メディアに取り上げられている店ばかりに傾倒しがち。そんなことに気づかせてくれたのが「イズモオプティーク」です。神の国、神話の国として知られるイズモですよ、IZUMO! 日本で47番目に有名な県、「島根県」ですよ。えっと、実は僕の妻が島根出身なのでよく行くんです。僕の知っている島根と言えば、四方を山に囲まれ、田んぼの間をレトロな単線が走る、コンビニまでクルマで15分の、それはもう“残酷なほどに美しいド田舎”なのですよ。
出雲市駅から南へ徒歩15分、国道添いには飲食店もコンビニも見あたらない。そんななかにポツンとギャラリーのような「イズモオプティーク」が佇んでいます。目立つようなお店の看板はなく、目につくのはショーウィンドウに飾られたドレスを着たトルソーのみ。……まったくメガネ屋に見えません! さっそくオーナーの兵頭優樹さんに話を伺ってみました。
「『イズモオプティーク』は2006年にオープンしました。もともと僕は東京の『ポーカーフェイス』で働いていましたが、妻が島根県出身で『出雲に帰りたい』と言って。妻の実家が美容室だったので、そこを改装してお店を作ったんです」
それって英断じゃないですか? 自分の実家ならまだしも、嫁さんの実家で島根へ移住って……。だって、うちの妻が初めてメディアで島根を見たのは、社会の教科書の「過疎化」の話ですよ!
「島根はそんなヒドいところじゃありません(笑)。……それで話の続きですが、『ポーカーフェイス』では抜擢されると本部に配属されて全体を見る立場になるんです。この時点でお店に立てないのはちょっと辛いなと思っていて。あとは仕入れ。例えば、当時は999.9を凄い数を仕入れていました。同じモデルの同じ色を10本確保するとか。僕が働いていたときはとても賑わっていたので、いかに人気商品をストックしておくのかが最重要。『商品がない』のは致命的で、“土日が来る前にいかに商品を補充できるか”、そういったことに神経を使っていました。なんか違うなって違和感を持ち始めて、自分のお店をやりたいと思ったんです」
最初は「仕入れNG」のブランドばかり
数社だけがOKを出してくれた。
店内を見渡すと、白い壁に渋柿調の什器やフローリング、ゆったりとしたソファーにロウテーブル……以上です、はい。なんですが、独特の空気感があってギャラリーのよう。知り合いの建築家に作ってもらったとか?
「いえいえ、内装は全て自分たちで作りました。もとは美容室だったのをバールで壊して、それこそ“劇的ビフォーアフター”みたいなノリで天井から壊して。什器もぜんぶ手作りで、同じ塗料で塗っているからすべて同じ色(笑)。義父の『趣味が日曜大工』だったので、半年ぐらいかけて一緒に作りました。古くならない上品な店にしたいと思って、質素にはならず、削ぎ落としたようなデザインにしました。うちはメガネを置いたときにちょうどいいんです、メガネがないと本当に寂しくなりますよ」
まさかの「趣味の日曜大工」。お父さん、それもう仕事にしちゃった方がいいんじゃ……。ちなみに店内はコーナーごとにブランドが分かれていて、オリバーゴールドスミス、ジャポニスム、プロポデザイン、オリバーピープルズなどが。これってどういう感じでセレクトしているんですかね?
「オープンするにあたってつながりのある人に仕入れの話を相談したんですが、バッティングの問題があって……。実は隣町のメガネ店がたくさんのブランドを扱っていて、最初はほとんどのブランドの取り扱いができなかったんです。当時、ジャポニスムとプロポデザイン、オリバーピープルズだけがOKを出してくれました。そのときはすごく嬉しかったですね」
いわゆるブランドの囲い込み、エクスクルーシブってやつですね。そんなことしていたら、島根の過疎化が進むだけじゃないですかっ!
「いや、過疎化は進んでませんから(笑)。そのあとにオリバーゴールドスミスを扱いたくて、サラディストリビューションの三島 正さんに話をしたら『とりあえず見に行く』って店まで来てくれたんです。松江のお店もオリバーゴールドスミスを扱いたいと言っていたそうですが、三島さんはうちに入れてくれました。『イズモオプティークの方が今後は良くなっていくだろう』と、売上の規模ではなく価値やスタンスで判断してくれたんです」
男気ありますな、三島さん。お洒落番長は伊達じゃなかったのね。それで今のセレクトになったと。
「はい。取り扱いOKを出してくれたブランドに恩があるので、ひとつのブランドをしっかり売っていこうと思っています。例えば、1シーズンだけ試しに仕入れて、売れなければ取り扱いをやめるとか、いろんなブランドをチョコチョコつまむようなことはしません。僕たちにとって、その地域でいかにブランドの価値を上げて、定着させるかが重要なんです。短距離走ではなく、マラソンですよ」
なるほど。浮気も風俗もなしね。ブランドへの深い愛を感じます。つまりは「出雲の中心で眼鏡を叫ぶ」ってやつ? ……はい、ぜんぜん上手くないですね。失礼しました!
後編に続く。
<SHOP DATA>
izumo optique(イズモオプティーク)
- 住所 島根県出雲市塩冶神前6-4-10
- 電話 0853-22-4015
- 営業 10:00〜20:00 木曜休
- http://izumooptique.com