メガネコラム:006 「鯖江市役所」に行ってきたよ![後編]

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メガネコラム : 006

「鯖江市役所」に行ってきたよ![後編]

メガネに関するネタやメガネにあんまり関係のないネタも取り上げるこのコラム。
前回に引き続き日本のメガネ産地である福井県・鯖江市の鯖江市役所に顔を出し、
産地に住む人の温度感や素朴な疑問を聞いてきました!

子どもたちには身近すぎて
よくわからないメガネの仕事

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「子どもたちは発想が豊かで大人が考えつかないようなメガネのデザインを描いてくれます」と、渡辺 賢さん。

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東陽中学校で行われたメガネデザイン授業。前半1時間でメガネづくりの流れやメガネデザイナーの仕事を伝え、後の1時間で子どもたちに自由にメガネのデザイン画を描いてもらうとか。

前回に続いて、「鯖江メガネファクトリー」のサイトを運営する鯖江市役所で話を聞いちゃいます。ここでは鯖江市商工政策課の渡辺 賢さん(写真中央)にお話を伺いました。そういえば「鯖江メガネファクトリー」のサイトにスペックエスパスのデザイナー山岸 誉さんが、鯖江の中学で行ったメガネデザイン授業のレポートが載っていましたよね。

渡辺「メガネデザイン授業は年1回行っていて、今回で3年目。鯖江の子どもたちにとってメガネ産業はとても身近で、おじいちゃんや親戚などがメガネの仕事をされていることが多いんです。でも、近過ぎるゆえに意外と仕事内容を知らないことが多くて。一方で『メガネ業界は景気が悪い』みたいな話は大人の会話から耳にしていたり……」

おじいちゃんちに行けばなんかガチャガチャ作業していて、なにやってるかは分かんないんけど、「大変そうだし、どうせ儲からないんでしょ?」みたいなノリ?

渡辺「……ええ。一方で地元にいながら世界に通じるデザインを生み出していたり、世界を相手に仕事をしている人が鯖江にいることを子どもたちに知ってもらいたいんです」

子どもたちのリアクションはどうですか?

渡辺「非常にいいですよ。初めは身構えている子どもたちも、山岸さんが作ったメガネをイチローが掛けているよって教えると、ころっと子どもたちの目が輝くんです。昼休みには『イチローが掛けたメガネどれ?』ってみんなが掛け合う。ベタなやり方ですが凄くいいことだと思います。それで授業の後に将来はメガネデザイナーになりたいって言う子が必ず出てきますから」

いいなぁ、その話。やっぱりメガネ業界が夢のある世界にならないとね。わかりやすい話、“メガネ業界に入ればモテる”でいいと思うんですよ。誰かカリスマオプティシャンが主人公のドラマ作ってくんないかな〜。

渡辺「メガネ業界への就職を希望して県外から移住してこられる方がここ数年増えています。外から見た時は魅力的な産業に見えているのに、なぜ地元では魅力的に見えていないのか? それは地元の控えめな県民性というか、凄い技術があっても誰でもできるよって言ったりするところもあって」

近すぎるゆえ、ですかね……。

ぶっちゃけ、鯖江は
いまどうなんスかね……?

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クルマを少し東へ走らせれば巨大ティアドロップのメガネモチーフに遭遇!

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鯖江市商工政策課では鯖江産メガネにまつわる印刷物を発行したり、SHIPSとのコラボモデルを作成しています。

ところで鯖江に来て思うんですが、メガネを感じられるものが少なくないッスか? 雑誌とかで見て、遂にメガネの聖地にやってきたと思ったら、駅前にモニュメントがあるだけで、後は背の高いビジネスホテル。鯖江に来た時にもっと“メガネ体験”できるといいと思うんスけど。

渡辺「高速道路が週末千円だった時代はいろんな方が『メガネ産地の鯖江に行けば変わったメガネが買えるんじゃないか』と足を運ばれました。でも、実際に来てみれば、産地ならではの小売店は僅かしかない。逆に都会の方が、いろんな種類のメガネを一堂に見られる。産地に期待される方が多く存在する一方で、それを地元が活かせないのはもったいないと痛感してます」

例えば、鯖江でしか買えないメガネがあるとか、7掛けで安く買えるとか、わざわざメガネ聖地に足を運んだメリットがほしいんですよ。あと工場見学できるとか?

渡辺「鯖江はOEM(他社ブランド製品の製造)が中心なので、発売前の商品が並ぶ工場は見せられないんですよ。技術の流出を防ぐためもあるし、見学対応へのコストなどの問題もあって……。でも、なんとか受け入れ態勢を作れないものかと業界の方たちと議論を重ねてますがなかなか現実は厳しく……」

う〜ん……そうですか。7掛けいいと思うんですけどねぇ、ぶつぶつ。ぜんぜん話変わりますけど、ぶっちゃけ、今の鯖江どうなんスかね? 景気とか。

部「いま二極化しています。『鯖江製』を打ち出している量販チェーンさんなどの受注を得ているメーカーは比較的稼働しているようですが、産地全体の受注数は年々減少していることから、稼働率が低くなっているメーカーもあります。また、メガネの製造で培った技術を活かして異業種に進出しようと頑張っている企業さんも増えていますが、産地全体で見ると決して楽ではない状況です……」

鯖江のメガネフレーム出荷額は、平成4年(バブル崩壊の翌年)をピークに右肩下がり。平成4年は出荷額が約1140億円だったのに、平成22年は500億円台……。なかなか厳しい!

「実は鯖江の約8割がOEM(他社ブランド製品の製造)の受注によって成り立っています。このまちは国内の大手量販チェーンや海外ブランドのライセンスものなどの受注を得ることで大きくなったんです。ただ、ここ20年で生産が中国や韓国にシフトしていき……」

8割OEM! ってことは、僕がこれまで見てきた日本のハウスブランドは業界内ではニッチな存在だったんですね。でも、いつまでもOEMに期待するよりも、違う手を考えた方がいいんじゃあ……。

渡辺「おっしゃる通りです。実は平成20年に“OEM依存体質からの脱却”をキーワードに課題と目標をたてたんです。産地企業の企業力向上に加えて、新たな市場開拓の可能性を確かめるため、セレクトショップのSHIPSさんとのコラボ商品を企画したり、タレントの梨花さんと共同でメガネを開発したり。産地鯖江としてのブランド確立を目指す若手経営者10人による勉強会組織、SBW(Sabae Brand Working Group)も発足しました。行政は企業さんのリスクをとれる立場ではないので、あくまで側面支援しかできませんが、数年も鯖江がメガネ産地として存続できるようにこれからもいろんな情報を発信していきます」

ホントはここから鯖江のドロドロした話で盛り上がったのですが(笑)、闇が深過ぎて手に負えないのでバッサリ割愛! 自分としては、まず鯖江の子どもたちが身近なメガネ業界に夢や憧れをもち、かつ数年後にカワイ子ちゃんが業界にわんさか入ってくれることを望みます!


「鯖江メガネファクトリー」
http://www.city.sabae.fukui.jp/users/monodukuri/sabaemegane/

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