メガネコラム:003「イズモオプティーク」をご存知ですか? [後編]

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メガネコラム : 003

「イズモオプティーク」をご存知ですか? [後編]

メガネに関するネタやメガネにあんまり関係のないネタも取り上げるこのコラム。
前回に続き、島根県は出雲市にある「イズモオプティーク」をご紹介します。
地方のセレクトショップはどうあるべきか? その新たなカタチがここに!

多店舗展開よりも
絞って絞って小さく

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店長の兵頭さんは「ポーカーフェイス」に勤めた後、2006年に奥さんの実家である出雲市に「イズモオプティーク」をオープンさせた。

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店内は天窓から明るい光が差し込む。

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下は50年代の米国でVIPセーフティと呼ばれたホワイトカラーが掛けていた「ティットマス」のヴィンテージ。上はフランスの60年代の「ブランメル」。フロントのエッジが今っぽい。

日本で47番目に有名な県、島根県は出雲市にある「イズモオプティーク」は、「ド」がつくほど田舎のロケーションながら(失礼)、メガネ業界の目利きがこぞって注目しているお店。白と柿渋色を基調とした店内はギャラリーのように洗練された空間ですが、何より“メガネ以外のこと”にも興味が向いている感じが伝わってきます。店長の兵頭優樹さん、いかが?

「確かにアプローチが少し違うかもしれません。お客様もメガネだけが好きというより、読書や映画、インテリアが好きで、その生活にはこんなメガネがいいんじゃないかとメガネを選ばれる方が多いです。僕としては“家具や照明を買うように”メガネを選んでもらえればいいなと思っています。だから、知り合いの陶芸作家の作品を置いたり、写真展を行っています」

こういうところ、これまでのハイエンドなセレクトショップとはつくり方が違う気がします。

「僕らの世代って、ひとつ上の世代の方々と店舗に対する考え方が少し違うと思います。ラグジュアリーな店づくりや多店舗展開にあまり興味がないんです。それよりも好きなことを絞って絞って、小さくやっていく。そんな傾向があると思います」

派手に大きく商売をするより、小さくても自分の価値観や世界観を大切にしたいってことですかね。とはいえ、地方でそのハイセンスなセレクトや店づくりが通用するんでしょうか? しかも過疎化が進む島根で……。

「だから過疎化は進んでいませんよ(笑)。実は、親の代がメガネ店を経営していて地元で店を継ごうという二代目の方が、うちのお店によくいらっしゃいます。みんな気になることは同じです。でも僕としては『地方でもできる』ってことを伝えたい。うちでもおじいちゃんがオリバーゴールドスミスを買ってくれたり、お寺の住職さんがルノアを掛けていたりと、むしろご年配の方の方がいまのクラシックなフレームは似合うんです」

つまり地方だからといってシニア向けのセレクトとかは意識しない方がいいと。ところで、ヴィンテージも扱っているんですね。

「定番のアメリカンオプティカルやボシュロムじゃない、アメリカンヴィンテージやフランスの60年代ものなど、珍しいものがありますよ。あと、先日タートオプティカルの取り扱いを始めました。タートに関しては迷ったんですが、オープンから8年が経って出雲の人たちに貢献したいという想いが出てきて。だって、島根でタートを見るには、3時間かけて広島まで行かないとダメなんですよ。自分たちが育った町で実際に手に取れないっていう寂しさを味わって欲しくないんです。僕が言うのも生意気ですが、島根でもメガネに関しては『イズモオプティーク』がある、自信をもってお薦めできているという自負はあります」

地方のお店で難しいのは
“ダレる空気”との戦い!?

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お店の隣にある「別館」は白を基調としたモダンな建築。

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「別館」の中はアンティークな雰囲気。実はここからお店の様子が見える。兵頭さんが「別館」にいてお店に誰もいない状態で、新たにお客さんが来たときなどはお店にすぐ戻れる。

ところで、地方ならではの難しさってありますか?

「……揺れると言うか。最初はみんな心意気があって『こんな店にしたい!』って想いがあると思うんです。でも、地方ではよくあるんですが、長年やっていると自分でも知らないうちに“ダレてくる”んです。それこそ常連さんが来てお店でお菓子を広げちゃったり。アットホームって言い方もできますが、アットホームとダラダラの境界線が凄く難しい。言うなれば、自分との戦いですね。」

なるほど〜! 確かに地元の先輩たちがジャージとサンダルで店に来て、酒盛り始めて5時間ぐらい居座られたらツラいですよね。店長なのに「タバコ買って来い!」とか言われたり。僕も灰色の青春時代を送ってきたので、兵頭さんの気持ちは痛いほどわかりますよ。アイツら何様のつもりなんですかね、生まれ変わったら説教したい!

「いや、そこまでヒドくないし、パシリでもないですから(笑)。それよりうちは夫婦2人でやっていて、注意してくれる人も他のスタッフもいません。狭い空間なのでお客様が重なったときに接客が難しくなることもあります。オープンから3〜4年目のときに常連さんが増えて、このままいくとお店が談話室になると思ったんです。そこで、店の隣に『別館』をつくりました。常に100%のサービスを提供するために、プライベートなお話をするお客さんを『別館』に誘導したんです。例えば、仲がいいお客さんが重なったときに、『向こう行きます?』って『別館』に行き、妻がお茶やお菓子を出して対応するとか。お店は常にベストな状態を保っていて、お客様がメガネと真剣に対峙できる空間でありたいんです」

それはナイスアイデア! ヤンキー隔離大作戦ですね!

「違うでしょ! えっと……以前、働いていた『ポーカーフェイス』は渋谷という土地柄、お客さんが凄く多かったんです。だから、土日などは指紋など拭き取りきれていないメガネがそのままになっていたり……。お客さんの数が違うからしょうがないのですが、『これ5万円とかするメガネなのにこんな扱いでいいのかな』と感じたのも、『別館』をつくったことに関係しています。僕は大きな組織にいたので、その良さも知っているし、できないこともわかっています。考えてみれば、ポーカーフェイスのときと真逆なことをしていますね(笑)」

<SHOP DATA>

izumo optique(イズモオプティーク)

  • 住所 島根県出雲市塩冶神前6-4-10
  • 電話 0853-22-4015
  • 営業 10:00〜20:00 木曜休
  • http://izumooptique.com

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