メガネコラム:009 イエローズプラス山岸稔明さん × ファクトリー900青山嘉道さん [前編]

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メガネコラム : 009

YELLOWS PLUS 山岸稔明さん
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FACTORY900 青山嘉道さん [前編]

メガネに関するネタやメガネにあんまり関係のないネタも取り上げるこのコラム。
今回は入手困難なフリーペーパー「HOOK」で行ったイエローズプラスの山岸稔明さんと
ファクトリー900の青山嘉道さんの意外な対談“ノーカット版”をお送りします!

イエローズプラスの1.stシリーズは
ファクトリー900の青山氏がつくった!?

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クラシックと立体造詣、やっていることが違い過ぎてまったく接点がなさそうなふたり。実は旧知の仲でした。

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イエローズプラスの絶妙なサイジングや繊細なディテールは、欧米を中心に海外でも高い評価を得ています。

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色鮮やかで楽しさが伝わってくるファクトリー900。欧州では「クール・ジャパン」のメガネと評されてます。

クラシックのフィルターを通して旬なアイウェアを提案するイエローズプラスの山岸稔明さん。独自の立体造詣で未来を追求するファクトリー900の青山嘉道さん。ある意味、過去と未来を見つめる真逆なふたりによる対談がここに実現しました! で、自分で企画しておいてなんですが、そもそもおふたりは面識があるんですか?

山岸 知り合ったのは古いよね? なにを隠そう、イエローズプラスの初期モデルは青山さんのところでつくったんです。意外でしょ?

青山 そうそう、2001年だったかな。僕は入社した翌年で、OEMの仕事を自分でとってきたのは山岸さんのところが初めてじゃないかな。

山岸 その前にiOFTでも会っていて、青山さんは組合のブースに立って自分の商品を展示していて、かたや自分はまだ商品がなくてただの手伝い。そのときに顔を合わせていろんな話をしたよね。青山さんが悶々としていた時期ですよ(笑)。

青山 僕、なに言いましたかね? あの頃はいろんなものに怒っていて不満タラタラでした(笑)。当時、川崎和男さん主催のSSID(鯖江市立インテリジェントデザイン講座)に通っていて、「デザインとはこうあるべきだ」って、頭が固くなっていたと思います。

山岸 お互いにヒマで誰も相手にしてくれなかった、そういう時代ですよ。組合のブースに立っても自分の作品をじゃないし、ちょうど同世代のブランドがデビューして、それを指をくわえて見ていた頃です。

おふたりは接点がないと思ってたので、かなり意外でした。ではそろそろ本題に入りますが、まずはブランドやモノづくりで大事にしていることを教えてください。

山岸 僕が心掛けているのは“美しいデザイン”かな。シンプルで仕立てが良くて、キレイなことです。クラシックがテーマなので、ある意味カテゴリのなかでのデザインになるけど、そのなかで毎年アップデートして㎜単位で修正を行い、少しずつ完成度を上げています。

青山 うちとしては新しいモノに価値を見い出していて、未来をメガネで表現するというか。新しけりゃいいわけじゃないんですけど、新しいなにかの先にいいモノがあって、上手く言えないんですけど……。

「メガネは玉型じゃない!」(青山)
「いや玉型が時代を引っ張っている」(山岸)

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「メガネは玉型ありき」と語る山岸さんは、メガネの鼻幅やヨロイ部分のボリュームなど、細やかなところに心血を注いでいます。

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胸をポンポンと叩きながら熱弁を振るう青山さん。人の心を動かすために、これまでにない驚きのあるメガネを追求しています。

では、ひたすら続くメガネのクラシックブームについてはどう思います?

青山 僕のなかではウェリントンやボストンはひとつのカタチでしかなくて、四角いメガネ、丸いメガネと一緒でひとつのカテゴリと思っています。別にウェリントンだからクラシックとも思ってないし、良くも悪くもスタンダードなメガネのカテゴリだと思っています。……って、どうなんスかね……クラシック? 話がズレるかもしれないけど、ブランドってベクトルだと思っていて、僕はそれが過去ではなく未来に向かったんです。メガネの概念を絶えず突き破っていくような。

山岸 青山さんは拘束のないところでデザインをしていて、それってある意味無限大でしょ? でもその落としどころを定めるのは凄く難しいはずで、落としどころがあるようでないジャンル。そのへんを青山さんはどうやってるの?

青山 いや〜、それはもう完全に自分を信じるしかないッス(笑)。僕、昔から「メガネは玉型じゃない」って、ずっと言ってるんです。もちろん玉型は大事ですけど、いちばんにもってきてない。僕はメガネを一個のモノとして見たときのカタチを見ていて、それは玉型だけでは決まってこないんですね。その意味ではトレンドや玉型に関しては、天地が深いのか浅い程度の「ふわっ」とした感覚でやっています。

山岸 青山さんを否定するつもりはないけど、自分は玉型ありきの考え方やね。玉型でトレンドを表現していく、そこに時代が見えてくる。全体のフォルムもあるとは思うけど、過去を辿ってもトレンドは玉型が引っぱっているような気がするよね。スポーツでもないし、モードでもない。いろんなジャンルがあるけど、自分は玉型が時代を引っぱっているような気がするな。

青山 ふんふん。なので今回の対談は凄く噛み合ない気がしていて(笑)

山岸 そう? 自分としてはまったく違和感がないよ。きっと青山さんはトレンドを玉型で表現してないだけで、玉型は大事だってのは一緒やもんね(大人のフォローです)。

青山 そうですそうです。たぶん玉型は3番目くらい。

山岸 えっ、3番なの! 2番はなに?

青山 2番はわかんないんですけど、いちばんはそれが「新しいかどうか」。

山岸 なるほど。青山さんはモノづくりのなかでサプライズの部分に凄くウェイトを置いていると思うな。ブランドの価値として安心感とサプライズがあるとすれば、自分の場合は安心感が重要で、プラスちょっとのサプライズ。

青山 ふんふんふん、なるほど。僕は新しいとか未来とか言ってるけど、究極的には「美」。美しいモノを目指しているんですよ。「美」っていうのはあやふやであまりに難しいので、それをなんとかメガネで表現したくて……。ちょっと長くなるけど、「美」っつうのはここ(胸をポンポンと叩きながら)が動く行為だと思うんです。僕はメガネでどうやったらここが動くかをずっと模索しています。そうすると、いちばんてっとり早いアプローチが非日常。誰もが新しいものを見たときにここが動くでしょう。

山岸 青山さんのは「美」っていうか、感動やね。

青山 あ〜、うん……。そうね、そうね。たとえ嫌悪でもここが動くことが重要で。

山岸 自分が考える美は日本的な美しさの考え方。控え目な美しさというか、絵にしても日本画は余白が多いでしょう。

青山 ワビサビの話ですよね。

山岸 そう。自分としては控え目な美しさをフレームに落とし込めたらと思ってるんだけど、それはヨーロッパでは凄く伝わりにくい部分(笑)。でも最近はヨーロッパでも、特にフランスの人は控え目な中間色の色合いとか、控え目であることの美しさを拾ってくれる人が増えた気がします。

中編に続く。

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