メガネコラム:010 イエローズプラス山岸稔明さん × ファクトリー900青山嘉道さん [中編]

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メガネコラム : 010

YELLOWS PLUS 山岸稔明さん
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FACTORY900 青山嘉道さん [中編]

メガネに関するネタやメガネにあんまり関係のないネタも取り上げるこのコラム。
イエローズプラスの山岸稔明さんとファクトリー900の青山嘉道さんの対談は、
さらにヒートアップ! 互いのメガネを掛けながらぶっちゃけトークをしてもらいました。

互いのメガネを掛けて一言。
できれば「けなす方向」で……。

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山岸さんが掛けているのはファクトリー900の「FA-086」。縦にスリットが入った斬新なモデルには、ちゃんとレンズが入っています。

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続いて山岸さんが掛けようとしているのは「FA-085」。見るからに楽しい20枚レンズのサングラスは、お店にあるとやたらと目立ちます。

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カシメの“こんもり具合”を確認する青山さん。イエローズプラスはカシメの鋲間を空けて、微妙な風合いを表現しています。

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イエローズプラスの「LOUIS」を掛けて、真剣に鏡を見る青山さん。「本当に丁寧な仕事をしていて、造りがキレイなメガネですね」。

オーセンティックで美しいメガネを提案するイローズプラスの山岸稔明さんと、ギャンギャンの立体造詣で未来を表現するファクトリー900の青山嘉道さん。デザインの方向性からして真逆なおふたりですが、ここからの対談は、お互いのフレームを見たり掛けたりしながら話を進めましょう!

山岸 青山さんのメガネを見るのが楽しみだったんですよ……ってなにこれ? レンズを入れてるんだ(写真右の山岸さんが掛けているモデル)。

青山 はい、スライドして2ピースでつくってるので。

山岸 こっちはお店でよく見るやつね(写真右下の山岸さんが掛けようとしているモデル)。青山さんのメガネってお店に置いてあると凄い存在感だから、すぐわかるんですよ(笑)。

青山 ありがとうございます。ちなみに、最近のカシメってこんなにこんもりしてるんですか?

山岸 “こんもり具合”はメーカーで違うけど、最近うちは鋲間を昔よりも少し広げています。例えば、クラシックって同じ音楽でも演奏する楽団によって聴こえ方が違ってくるでしょ。イエローズの商品もそういう感じで、鋲間などの細かなところを拾ってもらえると嬉しいかな。

青山 なるほど。それにしても造りが丁寧で良くできてますよ。カッコいい。あとフレームから今が良くわかるというか、今ってホントこんな感じですよね。僕はこういうメガネをマジマジと見たことがなかったので、面白いっス。鏡ってあります? 掛けてもいいですか?

山岸 どうぞ。ファクトリー900を見ていると、「青山さんは来年も再来年もこういうのつくっていくんだろうな」って思います。手間のかかる仕事だと思うよ、ホント大変な仕事だ。

青山 そう言ってもらえると嬉しいです。

……おほん。あの〜、互いに褒め合ってもつまんないので、できれば「けなす方向」でお願いします(笑)。

山岸 えっ? じゃ、じゃあ、自分はデザインするときにファッション雑誌とかでメガネを掛けてない人を見て、「この人だったらこういうメガネが似合う」とか、そういうのをイメージしているんだけど、青山さんは掛ける人のイメージとかある?

青山 ないです(即答)。最近いろんな人から言われるんですが、僕はモノ至上主義になっていて、単一なモノとしてメガネを捉えているんです。

山岸 例えば、自分は海外の展示会に行って、欧米の人が自分のメガネを掛けたときに、「もうちょっと下のラインを膨らませた方が良かったな」とか「鼻が狭い方が良かったとか」、掛け姿を見ていろんなことを思うのね。青山さんが海外の展示会に出展したときにそういうのってどう?

青山 なるほど、なるほど。新鮮で面白い。僕は掛けている人を見て、モノをなおそうというよりも、「このメガネって意外とこういう人に合うんだ」程度で、そこから発見していく感じです。「これは100人いたら30人くらいに合うかな」とか「こっちは100人いて1人かな」とか、そんなことを考えています。

山岸 青山さんと僕はモノづくりの入り口がまったく違うから、そういう違いが出るんだと思うな。

青山 あと、僕はそこまでファッションは重要視していなくて、どうしてもマインドの部分を大事にしようとしてしまう。

山岸 あっ、わかる。こういう商品つくるのはスピリッツないとできないもん。たぶん掛ける人もスピリッツがいる。どちらかというと自分は気分かな。「今日、理由なくこっちの靴が履きたい」とか、そういう意味での気分。青山さんはスピリッツでやってるな、気分は入ってないな(笑)。

青山 はっはっはっ。いや勉強になります。

「山岸さんの人物像とメガネが一致している
それが逆に想像どおりだったというか」青山

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イエローズプラスとファクトリー900。ベクトルがまったく違うデザインを自分ならどうする? 「う〜ん……」。しばしフリーズ。

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互いにやっていることが違いすぎて、噛み合っているのか噛み合っていないのかわからないまま対談は続きます。

どうせなら互いのメガネをダメ出してもらえませんかね(笑)。例えば山岸さん、ファクトリー900の立体ブリッジを自分なら何㎜削るかとか。「自分だったらこうデザインする」ってのを聞いてみたいです。

山岸 えっ? これを? う〜ん……。自分は普段から他社の商品を見て、「自分ならこの色は使わない」とか「ブリッジの太さが合ってない」とか、自分に置き換えて考えるんだけど、青山さんの商品は……。手の施しようがない(笑)。うん、どこからどうしていいかわからない。

青山 ……マジっすか。

山岸 それくらいすごい商品だと思うよ。同じカテゴリ内にあればなにか言えるけど、自分の発想の枠を超えているから。ただ、ここまでデザインが突出していると色がなくてもいいかも。黒とか濃いグレートか、3色くらいで統一してもキレイじゃない?

青山 一時期は黒ばっかり使ってたんですけど……なんなんですかね。

山岸 あとフレームから凄さは伝わって来る。発想にもスピリッツがいるけど、仕事にもスピリッツがいると思う。こういうのを手で磨かないとできない。そうでしょ。

青山 それわかってもらえて凄く嬉しいです。イエローズプラスはブランドとしての考え方もプロダクトも僕が入り込むスペースがない。山岸さんのイメージしているどおりのモノができているので、「逆に想像どおりだった」というか……。

山岸 それってどういう意味?(笑)。

青山 いや、想像どおりだったのが気持ちよかったんです。自分がもっていた山岸さんの人物像とプロダクトが基本的に一致している。

山岸 それが自分の個性だと思う。いま思い出したけど、初めてシルモに出展した年に、ある海外の有名ブランドに商品を見てもらったんです。そしたら「デザインもいいし完璧だ。でもクレイジーさはない。シルモでやっていくにはどこかクレイジーじゃなきゃダメだ」って言葉をもらって。でも、自分はクラシックのカテゴリのなかで突拍子のない色とかはできないし、自分のなかでも昇華できない部分かな。結局は自分のスタンスでやるしかないと今は思ってます。青山さんがシルモで通用しているのはクレイジーな部分だと思うな。

青山 みんなクレイジーとしか言わないですから(笑)。あとアメイジング。僕にとってクレイジーは褒め言葉ですよ。

山岸 そうかもね。改めて考えると、お互い近い時期にデビューしたけどやってることは“両極”だよね。でも、青山さんもずっとブレずにこのスタイルをやっていて、そこはリスペクトしています。プロダクトじゃなくても、その精神は尊敬しています。

青山 ありがとうございます。山岸さんはいろんな意味で大人というか、紳士ですよね。山岸さんの思考や細やかな気遣いが、ブレずにブランドに表現されている点に安心感を感じました。

後編に続く

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