メガネコラム:012 3Dスキャンでつくるビスポークのメガネとは? めがね舎ストライク[前編]

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メガネコラム : 012

3Dスキャンでつくるビスポークのメガネとは? めがね舎ストライク[前編]

メガネに関するネタやメガネにあんまり関係のないネタも取り上げるこのコラム。
久々にピンときたお店ができたので神戸に行ってきました!
なんでもビスポークのメガネ店で一風変わったことをするのだとか……。

「こんなもんできるか!」
ズバリと鯖江で言われてショック……。

2016年3月に神戸にオープンした「めがね舎ストライク」。こちらは、テーラーが顧客に話を聞きながら服を仕立てる、いわゆるビスポーク・テーラーのメガネ版です。レトロな街並のハンター坂の雑居ビルの二階奥に店があり、中に入るとバーさながらというか、まんまバーが広がってます。お酒も置いてますな。


顔を3Dスキャンしてつくるビスポークのメガネとは?[前編] 2

バーカウンターの奥は左にメガネ、右にお酒が“対等”に置かれています


「元々バーやった店を居抜きで使ってるんですよ」、と話すのはオーナーの比嘉大輔さん。「月曜日の夜だけバー営業もやってます」って、それホントにバーじゃないの。ところで、なぜビスポークのメガネ店をやろうと思ったんですか?


「3年ほど前に面白いオリジナル商品をつくりたいと思って鯖江の工場に行ったんです。1940年代頃のフレンチヴィン・テージの蝶番が凄くかっこよくて、『こういう蝶番をつくれますか?』って工場で聞いたら、『こんなもんできるか!』とズバリと言われて。今の規格じゃないからできないって話なんですけど。あ、そうかと……。ちょっとショックだったんです。こういう蝶番なんですけどね」

顔を3Dスキャンしてつくるビスポークのメガネとは?[前編] 3

こちらが鯖江で製造を断られたフレンチヴィンテージの蝶番

なかなかのぷっくり感、味があっていいッスね。っていうか、どうやってつくるんだコレ? 合金を叩いて伸ばすとか。確かにこの蝶番だと今のメガネ作りの製法からは外れてますな。


「そうなんです。そのときにメガネって意外と不自由なんだと始めて気づいて、そんな窮屈な物づくりは良くないなと。ずっとメガネ文化が広まることに貢献したいと思っていたんですが、もっと自由にエンドユーザーに伝わるように、自分がつくりたいものをつくれるようにって考えたときに、鯖江で発注するよりも自分でつくったほうがいいってなっちゃったんですよ。もともと手ノコでメガネをつくったりしていたので、やったらできるやろうって割と軽い気持ちで(笑)。そこからストライクがはじまったんです」

バイクかギターかメガネか……オンナか。
居酒屋のお客が進路を決めた!?

お店が生まれた経緯はわかりましたが、比嘉さんはそもそも何者なんですか?

「以前はポーカーフェイス(全国33店舗展開するアイウェアショップ)でバイヤーをやっていました。
商売がやりたくてメガネ業界に飛び込んだんです。親はこじんまりした居酒屋を神戸でやっていて、なんせ商売一家に育ったんで、中学生の頃から店を手伝ってました。そのせいか、自分で商売をした方がいいとずっと思っていたんです。で、進路を考えたときに興味があることを商売にしようって。当時、興味があったのが『バイクとギターとメガネと……女性』。このなかのどれを商売にしようかと考えて、まぁ女性を商売にするのはいかんなと思って(笑)。バイクかギターかメガネか、3日くらい考えたんですよ。で、たまたま居酒屋のお客さんに相談したら『メガネにせえ!』、何故なら『メガネがいちばん原価率が低い!』って(笑)。おお、そうか! じゃあ、メガネにしようと思ったのが、20歳のときです」


顔を3Dスキャンしてつくるビスポークのメガネとは?[前編] 4

「まぁコーヒーでも飲んでくださいよ」と、比嘉さん


完全にそのおっちゃんが進路決めてますね。おっちゃんの気分次第で、バイク屋の兄ちゃんになってたかもしれない。


「ありえます(笑)。で、まずはアルバイトでポーカーフェイスに入ったんですが、その後すぐにオヤジが亡くなったんです。ずっと癌だったんですが、オヤジが死ぬ三週間くらい前に『酒を飲みにいこう』って誘われて。飲みながら、『メガネを仕事にするわ』って言ったら、オヤジがめっちゃ喜んだんです。そのときに『やるんやったらトコトン続けんと意味がないぞ、だから一生やれ!』って言われて。そのすぐ後にオヤジは死んで、僕としては割と軽いノリでメガネ商売しよかなって思ってたんですが、オヤジに言い逃げされたみたいなところがあって。だから、一生メガネでやっていくって気持ちが強いんだと思います」


きっとお父さんも息子の進路が見えて嬉しかったんでしょう。なにより居酒屋のおっちゃんには足向けて眠れませんね。

本気過ぎるメガネ工房と
返品をなくす「新兵器」とは?

それにしても思い切りましたね? ビスポークのメガネ店って聞いたときにバックヤードにちょっとした加工機が置いてあるような店だと思っていたんですが。カウンターから左を向くと、工房はメッチャ広いし、本気な機械ばかりじゃないですか!


顔を3Dスキャンしてつくるビスポークのメガネとは?[前編] 5

バーカウンターからメガネ工房がよく見える。高価なNC加工機など、本気の機械が置かれています


「メガネをつくっているのが見れる場所をつくりたいと思ったんです。機械は鯖江の業者から購入したもので、新品と昔のものが混ざっています。でも、世の中にビスポークやオーダーメイドでメガネをつくる店はありますが、意外と返品が多くて、受け取ってもらえないって話を聞いたんです。やはりメガネって掛けてなんぼというか、どんなに写真やデザインで説明しても、メガネ屋が思っているほどお客さんは自分の掛け姿を想像できてないんです」


たしかに、オーダーメイドで実物を掛けずにメガネを作ってもらい、いざ実物を掛けたらイメージと違うってのはありそう。メガネは顔にのせるから、スーツや靴よりも、似合う・似合わない、好き嫌いがはっきりと出るし。


「だから、ビスポークのメガネを広げたいけど、もうひと工夫が必要だろうと。で、世の中3Dの時代なんで、ここは3Dスキャナーやろと。3Dのデザインもできない状態で思いついて、とりあえずやってみようと」


顔を3Dスキャンするんですか?


「はい、これで」


顔を3Dスキャンしてつくるビスポークのメガネとは?[前編] 8

アイロンではありません


意外なアイテムが出てきましたが、文字量も多くなってきたのでこのへんでおしまい。続きは後編で〜!

<SHOP DATA>

めがね舎ストライク

  • 住所 兵庫県神戸市中央区中山手通2-13-8 エール中山手ビル2F
  • 電話 078-222-9889
  • 営業 12:00〜20:00
  • http://meganeya-strike.com/
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