特集:そうだ、あの人に会いに行こう。 file:05 blinc・荒岡兄弟(荒岡俊行さん・荒岡 敬さん)

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思う存分 メガネトークがしてみたい!

そうだ、あの人に会いに行こう。

メガネのことは大好きだけど、それ以上にメガネの話をするのが好き。
そこで、これまでお世話になった人や、自分が好きな人に会いに行き、
思う存分“メガネトーク”をするインタビュー連載を始めました!

file : 05 | blinc 荒岡兄弟 (荒岡俊行さん・荒岡 敬さん)前編

自分たちの好きなことを
自分たちの温度感で継続する。

イメージ画像 1 特集:そうだ、あの人に会いに行こう。 file:05 blinc・荒岡兄弟(荒岡俊行さん・荒岡 敬さん) 撮影:藤井たかの

お兄さんの荒岡俊行さん(左)と、弟の荒岡 敬さん(右)。「2人は仲が悪いのか?」という失礼な質問に、「オアシスほど仲が悪いことはないです(笑)」と敬さん。

イメージ画像 2 特集:そうだ、あの人に会いに行こう。 file:05 blinc・荒岡兄弟(荒岡俊行さん・荒岡 敬さん) 撮影:藤井たかの

表参道にあるblinc vaseは次世代を担う国内外の新進デザイナーのメガネを数多く取り扱う。荒岡 敬さんは同店のディレクター。

今回はメガネ業界の最前線をひた走る、blinc(ブリンク)の“荒岡兄弟”にご登場いただきました。外苑前のblinc aoyama(ブリンク青山本店)と表参道のblinc vase(ブリンク・ベース)は、海外デザイナーとの結びつきが強く、その早いセレクトでスタイリスト御用達の店としても知られています。いま、業界人がもっとも注目する2人では?

荒岡 敬さん(以下:弟)「いや、ホントやっていることが昔から変わんないんです。一貫してじゃないけど、バカのひとつ覚え。商売もそんなに上手いわけじゃないし、好きなものを仕入れて好きなものを売っているだけ。そうだよね?」

荒岡俊行さん(以下:兄)「自分が楽しいことをずっとやってきただけですよ、じゃないとモチベーションが上がらない」

——いまメガネ業界はプロレス団体みたいに細分化されていて、村社会のような空気があります。でもblincはそういった村社会的な空気からもっとも遠い位置にある。その理由は、単純に他のお店や人のことよりも自分たちが好きなことだけに意識が向いているからだと思うんです。

兄「なんか凄くいいように分析してもらって、ありがとうございます。確かに他のお店のことはあまり気にしてないかも」

弟「僕はネペンテスとかベンダーとか、ちゃんと世界観をもっていて、自分たちの好きなことを自分たちの温度感で継続していける店が好きなんです。あれって媚びていないし、なにより“戦ってない”。つまり対外的に敵をつくるんじゃなくて、自分たちの世界観をどう伝えるかにしか注力していないんです。blinc vaseもそういう店にしたいです」

兄「僕は逆に戦ってますけどね。新しいブランドを入れても売れないじゃないですか、でもそのブランドが今の主流になるように戦っているっていうか。そういう意味でこれからも戦っていきたい」

弟「それ自分との戦いじゃん! ぜんぜん対外的じゃないし(笑)。あと思うのは、いま東京のファッションはマスで華やかにやるよりも、コアでカッコいいものを作ってそこに人を来させる、そんな流れになっていると思います」

——最近はメガネのセレクトショップも、小さく絞ってみたいな傾向を感じます。blincがまさにそう。

兄「よく『なんで外苑前みたいな辺鄙なところにつくるんですか?』って聞かれるけど、ぜんぜん意図的じゃないよね。単純にいいところに出せないっていう(笑)。だから多店舗展開にも興味はないですね」

弟「できたらやるでしょう?」

——もし「blinc伊勢丹店」とかできたらガッカリですよ。

兄「はっはっは」

ブランドに対峙する
セレクトショップの存在意義。

イメージ画像 2-1 特集:そうだ、あの人に会いに行こう。 file:05 blinc・荒岡兄弟(荒岡俊行さん・荒岡 敬さん) 撮影:藤井たかの

僕が上京していちばん最初に仲良くなったのが荒岡 敬さんでした。確か2006年のことで当時はアレックポールにハマってました。

イメージ画像 2-2 特集:そうだ、あの人に会いに行こう。 file:05 blinc・荒岡兄弟(荒岡俊行さん・荒岡 敬さん) 撮影:藤井たかの

荒岡 敬さんのお気に入りはジェレミー タリアンの「NEWSSTAND」。「まだ不完全だけど、自分の好きなことをやってるのが伝わってくる」

弟「ところで、藤井さんってメガネ雑誌の仕事をしながら、このサイトやフリーペーパーの『HOOK』を作っていますけど、それって雑誌だけでは縛りがあって自分の表現に限界を感じたから始めたとか?」

——いや、実は雑誌の仕事はまったくストレスないんです。自分はメガネが好きなんで、趣味に合わないメガネでも頑張っていいところ見つける作業は楽しい。

兄「プロのライターとして楽しんでいるってこと?」

——はい。だってイヤならヤメればいいんですよ。たまに、文句言いながら書いたり、撮影する人がいるけど、それなら最初から仕事を受けない方がいい。別でやりたい表現があるなら媒体を立ち上げるとか、本を出すとかすればいいだけで、それができないうちは自分の力量を受け止めて文句いわずに楽しめよって。

兄「僕もあんまり嫌いなメガネってないんです。うちってセレクトやってるから好き嫌いがはっきりしていると思われがちだけど、ないですね。どれも好き」

弟「どれも好きって! それちょい言い過ぎだろ(笑)」

兄「もちろん仕入れはしないですよ。ただ、実家がメガネ屋で生まれたときからセレクトされていない環境だから、いろんなメガネを受け入れています」

——敬さんはどうですか?

弟「嫌いは言い過ぎだけど、美意識が合わないのはあります」

兄「例えばどこ? これ書いた方が面白いですよ」

弟「本当にピンとこないブランドって興味がないから情報が入ってこないんです。逆にテオはかなり目にしているけど、僕じゃないって思っちゃう。ささる人はささるけど、僕はささらない」

——自分にとってのアラン ミクリがそうかも。素晴らしいブランドだし、業界に大きく貢献しているけど個人的にはグッとこない。

弟「あと僕は人が好きなんで、デザインはそこまでささらないけど、デザイナー本人がいいから仕入れることはたまにあります」

兄「だれ? それ? デザインは良くないけど、人はいいブランドって」

弟「その悪意ある言い方やめて。えっと、話を少し変えますが(笑)。実はayameは2回お断りしています。最初に見たときに正直ぐっとこなくて、3度目に見たときに1型だけ面白いのがあった。いくつか型があるけど、いいのはこの1型しかないし、後は好きじゃないからやりたくないって伝えたんです。そしたら『1型でもいい』って言うので、じゃあやりましょうと。そこからデザイナーの今泉さんと話すようになって、凄く熱い人なんですよ。面白いものが増えてきたので、今ではフルバリエーションに近い感じでやってます」

兄「ちょっと話を戻すけど、人のつながりで買うのはどうなの? 僕はセリマで営業をしていたときに人のつながりを重視し過ぎると、結局、余剰在庫になって店のためにならないので、それはやらないと心掛けていたけど」

——同感です! 人のつながりで仕入れられてもお客さんから見たら関係ないし。

弟「そこはバランスだと思っていて、特に若いデザイナーがこれからブランドとしてやっていくために、期待を込めて買い付けすることも大事だと思う。反面、ちゃんとデザイナーと対峙することも必要だから、上から目線じゃないけど、デザインに対して自分はこう思っていますと、好き嫌いははっきり言います」

兄「そこは同じかな。海外で仕入れとか行くけど、こうして欲しいとか、こうだから良くないとか言っちゃうもん。そういえばお前、前に泣かしてたよね?」

弟「これ絶対に書いてほしくないんですけど、ピー(自主規制)のデザイナーさんに商品を見せてもらったときに、『あまり面白くないですね』って言っちゃったんです。デビューして間もないのにこれだと普通すぎて、あんまり伝わんないじゃないですかって。そしたら目の前で泣き出して、『これやっべぇ』って」

兄「それで買ったんだ」

弟「だってそんな状況だからさ……。いや、でも、そんなこともあってか、現在は本当に素晴らしいブランドになられていますよ!」

——いろいろ話を聞いて正直ホッとしました。ブランドと本気で対峙するからこそ、セレクトショップの意義があると思うんです。最近は人のつながり重視とか多過ぎませんかね? ……ぶつぶつ。

後編に続く

インタビューを終えて。

“荒岡兄弟”はとにかくアツい、それでいてユーモアが分かる人たちだと思う。特にお兄さんの方はあえて書きづらい話を人に振るクセがあります(笑)。正直、セレクトやメディアに対してはかなり戦略的にやっていると思っていましたが、要するに敬さんが言っていた「一貫して、好きなものを仕入れて、好きなものを売っている」なんですね。こういう人たちがこれからの業界を引っ張っていくんだろうな。

blinc aoyama(ブリンク青山本店)

  • 住所/東京都港区南青山2-27-20 植村ビル1F
  • 電話/03-5775-7525
  • 営業/11:00~20:00 月曜休み
  • http://blinc-aoyama.com
blinc aoyama(ブリンク青山本店) イメージ

blinc vase(ブリンク・ベース)

  • 住所/東京都港区北青山3-5-16 1F
  • 電話/03-3401-2835
  • 営業/11:00~20:00 月曜休み
  • http://blinc-vase.com
blinc vase(ブリンク・ベース) イメージ

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