特集:そうだ、あの人に会いに行こう。 file:10 メガネライター・伊藤美玲さん

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思う存分 メガネトークがしてみたい!

そうだ、あの人に会いに行こう。

メガネのことは大好きだけど、それ以上にメガネの話をするのが好き。
そこで、これまでお世話になった人や、自分が好きな人に会いに行き、
思う存分“メガネトーク”をするインタビュー連載を始めました!

file : 10 | メガネライター 伊藤美玲さん

メガネ好きの女子が
iOFTで編集者を“逆ナン”!?

イメージ画像 1 特集:そうだ、あの人に会いに行こう。 file:10 メガネライター・伊藤美玲さん 撮影:藤井たかの

OL時代の唯一の楽しみはメガネを買うこと。「高いお金を出して買うんだから、ワタシは人にメガネを突っ込まれたいわけですよ(笑)」

イメージ画像 2 特集:そうだ、あの人に会いに行こう。 file:10 メガネライター・伊藤美玲さん 撮影:藤井たかの

メガネの魅力を開眼させてくれたファース ア ファース。「個性的だけど保険会社でも使えるデザインです」

イメージ画像 3 特集:そうだ、あの人に会いに行こう。 file:10 メガネライター・伊藤美玲さん 撮影:藤井たかの

「伊藤家は眼鏡が嫌いで、写真を撮るときはメガネを外せと言われて育ちました。でもこのBOZは写真を撮るときに掛けるメガネ。こういう世界があるんだ! って教えてくれた1本です」

今回は「モード・オプティーク」や「眼鏡Begin」といったメガネ専門誌や、「ハフィントンポスト」でも活躍中のメガネライター伊藤美玲さんです! 伊藤さんは“メガネライター”という地位を確立した先駆者で、僕にとっては先輩のような後輩のような存在。初めて会ったのは7年ほど前で、当時は「もっとメガネの記事を書きたいんですッ!」と、目をキラキラさせていきましたが、あっという間にセレブになってしまいました!

「ぜんぜんセレブじゃないですよ!」

いや今日の金縁メガネもセレブっぽいッス。ところで、どうやってメガネライターになったんですか?

「25歳のときに保険会社のOLをしていて、そのときに新宿のルミネにあるエロチカでファース ア ファースのこのモデルに出会ったんです(写真右)。当時は、『どうして私の作るメガネはレンズが分厚くなるんだろう?』と疑問だったんですが、スタッフさんが『目が悪い人は径が小さいものを選ぶとレンズを小さくできますよ』って教えてくれて。そんなこと初めて言われたから、『なんてこの人はいい人なんだッ!』って感動。しかも、デザイナーは元建築家でフランスのブランドですって聞いて、『凄い!』って」

目からハートですね(笑)。そこからハマり出したと。

「はい。それからは、同潤会アパートにあったリュネット・ジュラに入り浸ってましたね……えへへ。当時、mixiにジュラさんのコミュニティがあって、ジュラの誕生日イベントがあったんです。それに参加したときにメガネ好きの人たちがメガネを見ながら『これは芯張りかな、シューティングかな』とか言うんですよ。『な、なんだそれは?』みたいな。そこからもっと詳しくなりたいってマニアックな方向にいきました」

僕が初めて伊藤さんに会ったのは、その少し後。メガネマニアの人たちのなかに“おかしなテンション”でメガネを語る子がいるなと思って(笑)。でも、そこからどうやってメガネライターになったんですか?

「メガネが好きになった後に小売店向けの業界誌を作る出版社に転職、その後にフリーになりました。で、28歳の頃に友だちのツテでiOFTの入場券をもらって初めて行ったんです。そこでBeginの編集者さんがいたので『ワタシ、私眼鏡好きなライターなんです!』って名刺を渡して逆ナンしました(笑)。後日、その編集者さんから電話があって、そのときに取材していたライターさんが締め切りの日に連絡がつかなくなったとかで、『原稿を書きませんか? 締め切りは今日です』って(笑)。それがメガネライターとしてのデビュー仕事なんですよ」

「昔の自分」のように
メガネで悩んでいる人に届けたい

イメージ画像 2-1 特集:そうだ、あの人に会いに行こう。 file:10 メガネライター・伊藤美玲さん 撮影:藤井たかの

伊藤さんがOLさんにぜひオススメしたいのがオポープ。「キメキメじゃなく、普通の服装でもサラリとカッコ良く掛けこなせます」

イメージ画像 2-2 特集:そうだ、あの人に会いに行こう。 file:10 メガネライター・伊藤美玲さん 撮影:藤井たかの

「バートンペレイラのパティ・ペレイラさんにインタビューしたときに、本人が掛けていたものをゆずっていただきました」。貴重なサイン入り!

メガネライターとしての確固たる地位を確立した伊藤美玲さん、今の心境はどうッスか? 「当時の自分から考えれば、“いい思い”をしすぎちゃったなって感じています。実は去年くらいからずっとモヤモヤしていて……。いま、当たり前のようにシルモ(フランスのメガネ展示会)に行って、デザイナーに会って、新作を取材していることに対して、『なんかいいのかな~』みたいなのを感じていて」 倦怠期みたいなもんですかね? 「……倦怠期には正直なっているのかな。『新作だ~!』って、ワ~キャ~言っているのは自分としては楽しいけど、これが『ホントに読者へ届くのか?』ってことにもモヤモヤしています」 まぁ、その手の倦怠期は表現者にはつきものですよ。僕も未だにモラトリアムから抜け出せません(笑)。ただ、メガネに関してはここ数年でマニアックなポジションになっちゃったなと。メガネのブランド名なんて一般の人はほとんど知らないし、逆に「そういうの知らなくていいんじゃね?」みたいな空気が少しある。10数年前ならメガネのハウスブランドを知っていることにも価値があったと思うんですが、いまはその価値が落ちちゃったなと。

「メガネもそうだし、ほかの業界も最近そうなのかなって。旦那さんがデニム業界ですが、最近は色落ちがうんぬんとか言う人が少なくなっています。2chでもジーンズがダサいって盛り上がってますし。そういう語る部分に価値を見いだす人が少なくなってきた」

いま、モノにこだわりすぎた人が間抜けに見えるって構図はわかるんです。ただ、『こだわるのバカじゃね?』ってスタンスは、“働いたら負け”みたいなもんで、それは放棄しすぎだろうと(笑)。

「ワタシはメガネが特別に扱われすぎだと思うんです。みんな『似合うメガネがほしい』ってお店に行くけど、似合うネックレスください、似合うスカートくださいって言わない。自分に似合うワンピースがほしいときに、その人の頭の中に思い描いている形や長さがあると思うんです。でもメガネはそれがなくて」

たぶん蓄積がないからでは? スーツにせよTシャツにせよ、年を重ねるごとに自分の好きなラインや色ってのが決まってきますよね。例えば、伊藤さんだったらAラインの服がやたら多いみたいな(笑)。メガネはそういった経験値も、それを補足する情報も圧倒的に少ない。

「だからこそモノばっかりで語らなくてもいいんじゃないかって、仕事ではそうなんですけど……モヤモヤしてますね、ワタシ。……わかった! OLさんに向けたいです。ズレる人には鼻盛りすればいいんだよ、とかちょっと便利なことも伝えていきたい」

つまりは昔の自分に伝えるようなもの?

「それです! 私がどうしてレンズが分厚くなるんだろうと悩んでいたように、絶対にいいメガネに出会ってなくて悩みを抱えている人がいると思うんです。そういう人に伝えたいな。今しゃべりながら思ったんですけど、やっと伝えることを考えるようになったのかも。メガネライターを8年やってきて、今までは目の前の仕事に必死だったけど、これからは今まで支えてくれたメガネ業界の人や業界に恩返しをしたい。そういうことをようやく考えられるようになりました。って、いいのかな~これで(笑)」

インタビューを終えて。

伊藤さんはとても真面目な人なので、そこがメガネ業界にあっていると思います。その一方で、iOFTで逆ナンしたり、自腹でシルモに行ったりと、「えいやっ」と、行動できるのが彼女の強みなのかなと。なので、倦怠期もリスクを背負って「えいやっ」と行動してしまえば、あっさり乗り越えられる気がします。これからも一緒に業界を盛り上げていきましょう!

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