特集:そうだ、あの人に会いに行こう。 file:16 USH・外山雄一さん

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思う存分 メガネトークがしてみたい!

そうだ、あの人に会いに行こう。

メガネのことは大好きだけど、それ以上にメガネの話をするのが好き。
そこで、これまでお世話になった人や、自分が好きな人に会いに行き、
思う存分“メガネトーク”をするインタビュー連載を始めました!

file : 16 | USH 外山雄一さん

アッシュの2015年新作( S )ラインは
フラットデザインで「影」を表現した。

イメージ画像 1 特集:そうだ、あの人に会いに行こう。 file:16 USH・外山雄一さん 撮影:藤井たかの

USHのデザイナー、外山雄一さん。

イメージ画像 2 特集:そうだ、あの人に会いに行こう。 file:16 USH・外山雄一さん 撮影:藤井たかの

2015AW新作サングラスのプロトタイプ。フロントはすべてレンズだから、ある意味ツーポ。

イメージ画像 3 特集:そうだ、あの人に会いに行こう。 file:16 USH・外山雄一さん 撮影:藤井たかの

完成した新作サングラスはバックリムがデザインのキモ。これもツーポ。

今回はアッシュのデザイナーである外山雄一さんに、2015年秋のシルモ展(フランス最大のメガネ展示会)で発表される新作をいち早く見せてもらいました! 2009年にデビューしたアッシュは、某アイウェアメーカーのインハウスデザイナーとしてキャリアを積んだ外山さんが立ち上げたブランド。クラシックなモチーフを独自の解釈で再構築するアッシュですが、新作はいかに?


「コンセプトは“影をデザインする”です。ゲーテの戯曲に『There is strong shadow where there is much light(光の多いところには、影がある)』という台詞があるんですが、影を纏うという意味合いでサングラスをデザインしていきたいと思い、( S )ラインと名付けました」


ゲーテだなんて意味深じゃないですか、とにかくあれ見せてくださいよ。おおっ!! フロント枠がなくて、全部レンズじゃないですかッ! しかもレンズの縁がマット加工で、つなぎ目があるように見えて実はフラット。


「はい、レンズは周辺だけマット加工を施しています。レンズの裏にはメタルリムを配していて、レンズを透かしたときに新たな影が生まれるデザインです。表面はレンズのみ、でも裏に実態がある。光が当たったときに影になった部分を具現化し、影も含めてプロダクトとして身にまとう。そういった遊び心とエレガントなデザインが共存するサングラスです」


工場は嫌がったんじゃないですか? レンズのマット加工って難しそう。


「嫌がりましたね(笑)。まず、バックリムはチタン製ですが、チタンとレンズが合わないとかね。レンズにマット加工を施す技術は、昔にポラリスなどの夫人フレームが人気だった時代には日本にもあったのですが、今はもうほとんどできるところがなくなっています。製法も含めて試行錯誤中です」


でも、なんでまたこんなことを考えたんですか?


「影って、凄くフォトジェニックなモチーフじゃないですか。そういうのをデザインできたら面白いなって思って。あと今のデザインはいかに立体的なものを平面にするかだと思うんです。昔のモチーフをより平面的にすることで、未来的になったりもする。もっと軽く、フラットにできたら面白いと考えてこのデザインに至りました。デザイナーとしては、デザインの可能性を常に掘り下げたいし、みんなが初めて見るものを作りたいんですよ」


少し前にiPhoneで採用されたユーザーインターフェイスしかり、大ひんしゅくを買った東京五輪のエンブレムしかり、フラットデザインはデザイン界の大きな流れでしょうね。メガネもマイキータ×メゾンマルジェラのコラボモデルや、トム ブラウンのゼロカーブレンズもその流れ。……って、なんか今回は真面目な話ばっかり(笑)。せっかくインタビューしてるんだから、もうちょっとどうでもいい話をしましょう!

実は日本のメガネデザイナーは
海外では得をしている!?

イメージ画像 2-1 特集:そうだ、あの人に会いに行こう。 file:16 USH・外山雄一さん 撮影:藤井たかの

外山さんのお気に入りは「UF0-028.col7」。デザインはクラシックでも軽いカラーリングです。

イメージ画像 2-2 特集:そうだ、あの人に会いに行こう。 file:16 USH・外山雄一さん 撮影:藤井たかの

外山さんの会社、アトリエサンクのオフィス。

そもそも、なんでメガネのデザイナーになろうと思ったんですか?


「中学の頃に陣内孝則がアラン ミクリを掛けてテレビに出ていたんです。その頃はアラン ミクリを知らなかったけど、カッコいいなと思ってメガネに興味をもちました。15歳の頃にジュジュビーさんの枠を買ったのがマイファーストメガネだったかな。当時、高校受験のために代ゼミに通っていましたが、授業をさぼって原宿の文化屋雑貨店という雑貨屋でブロウのメガネとか買ったりしていました。しかも、自分でメガネを削ったりしていたんですよ。あの頃は、『anan』とかの表紙にソニア リキエルのリングが入ったメガネが載っていて、『これカッコいい!』と思って自分で穴をあけてました(笑)」


勝手にカスタマイズ!? どうやって穴をあけたんですか?


「ドライバーみたいな細いもので。プラモのジオラマ感覚ですよ。もう格闘し過ぎてボロボロになったり。あり物をイジるのが好きでしたね。でも後にソニア リキエルやってる会社に就職するってのもおかしい話なんですけど」


たしかに不思議な縁を感じますね。ところで、海外の方は取り扱いが増えているんですか?


「韓国とフランスが伸びていますね。韓国だと100店舗程度アッシュを取り扱っていただいてます。普通に韓国の空港とかでアッシュのメガネを掛けている人を見かけますよ。フランスは今年からエージェントを入れて、今年のシルモ展もブースを広げて、本格的にフランス市場を狙って行こうと思っています」


100店舗ってすげ〜! 韓国アッシュ祭りだ。しかも、シルモ展に出展したのって過去2回だけですよね。


「はい。シルモ展とミド展の成果は着実に実っています。海外の展示会に出展すると反応が良くて、メイド・イン・ジャパンの信頼性を凄く感じます。デザイナーって『自分の実力でデザインが評価されている』っていう気持ちが強いからそれが見えてこなくなりがちだけど、僕が見る限り、うちのブランドを含めて海外で日本のブランドが評価されている大きな要因は、メイド・イン・ジャパンだと思います。日本の工場で作っていることが、僕らが評価されている大きな要因のひとつで、デザイナーが思う以上にそこは評価されている。極論を言えば、メイド・イン・チャイナであっても世界で通用するデザインをできるようになりたいと思っています」


日本の技術力があるからこそ実現可能なデザインってありますよね。そして日本のメガネデザイナーが海外に進出するときは、「+α」で得をしていると。“推薦入試”みたいにもとからプラス20点あるみたいな感じ?


「そうそうそう(笑)。あと、いまはクラシックを焼き直したようなデザインがメインストリームにありますよね。で、一般の人がクラシックなメガネを見たときに、王道や定番があり、安い廉価版があると思うんです。そこにちょっと変わったデザインでもクラシックだなっていうものがあると、広がりがあるじゃないですか。『メガネって面白いな』ってなるじゃないですか! そこを僕はやっていくべきだと強く感じているんですよ。ビジネスとしていいかはわかんないけど、どこに属するかっていうと、こっちに属していたいって気持ちがあるんです」


僕としては、そういう半歩か一歩か進んだデザインがニッチなマーケットで終わらず、大きなムーブメントになってほしいんですよ。まぁ、今回じっくり話を聞いて確信がもてましたよ。アトリエサンクは潤っていると(笑)。


「そういう話じゃなくて(笑)。真面目な話をすると、海外で評価が生まれているからこそ、今回のような新しいチャレンジができる。次の種を巻くことができるんです。今はその時期だと思うんです」


ずっと真面目な話しかしてくれないじゃないですか……。

インタビューを終えて。

「外山さんって真面目だなぁ」と思いつつ、あらためてデザイナーとして芯があるんだなと感じました。あと、アッシュがまだデビューから6年しか経っていなくて、韓国で100店舗も取り扱いがあるのが驚き! 多くのメガネブランドが海外、特にアジアに販路を求めるなかで、短期間で成果が出ていて「商才あるんだな〜」と関心。僕もメガネに穴をあけたら儲かりますかね(笑)。

USH by yuichi toyama

USH by yuichi toyama イメージ

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