メガネコラム:005 「鯖江市役所」に行ってきたよ![前編]
メガネコラム : 005
「鯖江市役所」に行ってきたよ![前編]
メガネに関するネタやメガネにあんまり関係のないネタも取り上げるこのコラム。
今回は以前から気になっていたサイト、「鯖江メガネファクトリー」を
運営している福井県の「鯖江市役所」に行ってきました!
行政と学生が作った
メガネ産地「鯖江」応援サイト
メガネライターという仕事柄、日本のメガネ産地である福井県・鯖江市を取材することが多いです。で、メガネの工場名をググるとひっかかるのが「鯖江メガネファクトリー」というサイト。これ、メガネ職人のインタビューが膨大に載っていて、写真やデザインもなかなかイイ。気になったので運営元の「鯖江市役所」に行ってきました! お話を伺ったのは鯖江市商工政策課の渡辺 賢さん(写真中央)、同じ課の乙坂 薫さん(写真左)と新山直広さん(写真右)です。
渡辺「商工政策課はメガネや漆器、織物など鯖江の産業を支援する課で、『鯖江メガネファクトリー』は行政としてなにかメガネをアピールするきっかけを作れないかという思いで、平成19年に立ち上げました。当時は鯖江がメガネの産地であることを知っている人が少なく、鯖江産メガネと聞いてもどんな価値があるのかもあまり知られていませんでした。魅力や価値のある産業があるのにそれがうまく表現できていなかったので、鯖江のブランド力を表に出していくためにサイトを立ち上げたのです」
「鯖江=時代に取り残されている」という勝手なイメージがあったのですが(すいません!)、サイトが単なるお洒落路線じゃなくてイラストや編集など細かいところに気を遣っているのが良かったです。
渡辺「ありがとうございます。最初は制作会社に委託してよくあるようなサイトを作ろうという話もありましたが、果たして読み手が『それを読みたいか?』と。当時、地元でフリーペーパーを作っていた大学生に声を掛けたところ幸いにも興味を持ってくれて、学生の目線で取材をしてサイトを作る案が浮上。その学生たちとアイデアを出しながらサイトを作っていきました。それぞれスキルをもった学生たちで、デザインやプログラミングなども彼らが行ったんですよ」
なるほど。ところでメガネ職人のインタビューが現在64人とやたら充実していますね。
渡辺「メガネの職人さんは非常に黒子的な存在ですが、その黒子的な存在がどういう想いをもってモノづくりをされているのか? どんな作業や熟練の技があり、どういった喜びがあるのか? そんなことを伝えたくて『ゲンバシュギ』というメガネ職人インタビューのコンテンツを作りました。それだけではマニアックになるので、業界で生き生きと働く女性に焦点を当てた『オプティガール』、メガネに関する基礎知識をまとめた『メガネ選びのツボ』、メガネにまつわるエトセトラを紹介する『メガネザンマイ』の4コンテンツでスタート。立ち上げ当初は4人の学生たちと深夜までああでもないこうでもないと話をしましたね(笑)」
一緒にサイトを作っていた大学生は卒業して社会人に。二期生として福井大学の学生が約4年制作に関わり、乙坂さんと新山さんで運営する今のやり方に。現在は、鯖江産メガネが買える店を紹介する「メガネを買いに」が加わり、コンテンツはかなり充実しています。
朴訥でシャイなメガネ職人を
インタビューするのが難しい!?
では、実際にサイトを制作するなかで難しいと感じるところは?
乙坂「職人さんは朴訥とした方が多く、こちらが聞いたことに対してぼそぼそと一言で終わることがあって話がふくらまないことが……(笑)。苦労話や業界に入ったきっかけを聞きたいんですが、初対面で深いところまで立ち入るのも……そのへんの距離のとり方はいつも悩みます」
新山「逆に意外と饒舌な方もいて、いろんなことを話していただけるんですが、だんだん質問の内容からズレていって……。『これどう原稿にまとめよう?』みたいなことはありますね(笑)」
確かに無口な職人さんのインタビューって難しいですよね、あと話がズレるなんて僕がインタビューするとしょっちゅうですよ(笑)。じゃあ、この仕事をしていて良かったことは?
乙坂「福井の方の性格もあると思うんですが、職人のみなさんはホントに真面目で誠実に仕事をされているんですね。ひとつの工程にしても、『ここまでしなくても』っていうぐらい一手間二手間が加わっていて。そういう真面目に手を抜かずに仕事をしている姿を見ると、自分も襟を正す思いがします」
新山「僕は関西出身なので、これまでメガネ工場に行く機会がありませんでした。だからなのか単純に工場がフォトジェニックと言うか、カッコ良い。それと、売り上げがどんどん下がっていくなかで、『自分が売れるような商品を作れないかっていつも思ってるんだ』といった話を聞くと、生き残っていくための人間の強い意志を感じて。自分にもできることはないかなって考えさせられます」
乙坂「あと、凄い技をもっている職人さんでも、みなさん自分が凄いとは思っていなくて。『僕はこんなことしかできないから、来てもらうのも申し訳ない』と言う方が多いんです。取材も4件に1件くらいは断られますね。写真を撮られたり、話をするのにも慣れていないシャイな方が多いんです(笑)」
なるほど、前に出たがらない県民性ゆえですね。ところで「メガネを買いに」で紹介するお店の数を増やしません? ちゃんと取材していて写真もキレイなのに、数が少ないッス!
新山「実はいちばんPV数が多いのがこのコンテンツです。ただ距離的な問題もあってなかなか進まない現状もあって……」
今、ちゃんとメガネに愛情をもってお店を紹介できているサイトがないと思うんです。日本全国のメガネ店を数だけ網羅したものがあるけど、プロから見れば“ド素人がネット検索を駆使して作った感満載”で笑っちゃうレベル。それを鯖江市がやれば、ユーザーには便利だし、信頼感もある。メガネの文化的にも意味があると思うんです。
渡辺「直近としては『メガネを買いに』は産地と消費者を直接結ぶアーカイブだと思っています。よく『鯖江のメガネはどこで買えるんですか』という電話がかかってくるんですが、『メイド・イン・ジャパンと記されているメタルフレームは鯖江で作っています』といったご案内しかできない。東京ならここ、大阪ならここと案内できるようにしたいですね」
100店ぐらいドカンとアップしちゃいましょうよ。本気を出せば2カ月あればできますって! さて、せっかく「鯖江市役所」までやって来たので、次回は鯖江についていろいろ聞いちゃいます。
「鯖江メガネファクトリー」
http://www.city.sabae.fukui.jp/users/monodukuri/sabaemegane/