メガネコラム:022 3Dスキャンでつくるビスポークのメガネとは? めがね舎ストライク[前編]
メガネコラム : 022
3Dスキャンでつくるビスポークのメガネとは? めがね舎ストライク[後編]
メガネに関するネタやメガネにあんまり関係のないネタも取り上げるこのコラム。
神戸に生まれたビスポークのメガネ店「めがね舎ストライク」では、
顔を3Dスキャンしてメガネをつくるとか。その驚きの手法とは?
オバマ元大統領も使用した
3Dスキャナーを採寸に用いる!?
2016年3月にオープンした「めがね舎ストライク」は、自分好みのメガネをフルオーダーでつくれるビスポークの店。世の中にオーダーメイドでメガネをつくれる店はありますが、実は完成品のイメージがしにくいため意外と返品も多いのだとか。そのため、同店では顔を3Dスキャンする新しい取り組みを行っているそうです。
「これが秘密兵器です」
そう言ってオーナーの比嘉大輔さんが取り出したのが3Dスキャナー。「めがね舎ストライク」にはセミオーダーとフルオーダーがあって、この3Dスキャナーはフルオーダーに使うそうです。
「医療現場などでも使われるハンディ3Dスキャナーです。たとえば、乳がんの方がおっぱいを再生するために元の形をとっておくとか、そういったことにも使われています。オバマ元大統領の3D肖像画をつくるのに使用されたのも、このスキャナーですよ。顔をスキャンして、お客様にデータ上でメガネの仕上がりイメージを事前に共有してもらうんです。ちょっとやってみますか?」
あ、はい、ぜひ。
「こうやって……」と、少し離れた位置から僕にスキャナーを向けて、僕を中心にグルグルとまわりはじめる比嘉さん。
「シュパッ、シュパッ、シュパッ、シュパッ」
な、なんスかコレ? フラッシュみたいで眩しいんですけど……。
「こうやって顔のデータをとっていくんです。こうすればPC上で藤井さんの顔のデータを見れるんですよ。ほら」
え? ……ええー!! 顔面バイオハザードみたいじゃないですか!
「す、すいません。光の具合でスキャンに問題があって、あまりキレイに画像がとれなくて……」
こわいコワイ怖い!! 回転させんといて! これ女性だったら結構凹みますよ。
「……ですよね〜、いま改善中なんです。キレイにスキャンはとれていませんが、機能は大したもので顔幅やPDが実寸で出ますよ。ここにメガネのデザインデータを載せて、CADソフトで立体データをつくるんです」
なるほど、別でメガネのデザインをつくってそれを顔のデータに合わせるのね。う〜ん、なんだか微妙な彫刻みたいっス。まぁ、今回はとりあえず簡易作業ということで見え方のクオリティはさておき、これなら仕上がりのイメージができるかな(その後スキャンのクオリティは改善されたそうです)。
マシンと手作業を織り交ぜて
1本1本丁寧にメガネをつくる
このように「めがね舎ストライク」では、メガネを掛けた顔の立体イメージをつくり、それを基にお客さんにデザイン提案を行っています。そこで何度かデザインを詰めて、デザインが固まると、いよいよ製造がスタート! まずはアセテートの板からメガネの枠を削るところから。マシンで削り出します。
「『手のこ』の手作業でフレームを削ると、どうしても決めたデザインに対してドンズバであがりません。それって『責任感ないな』と思って。だから、フレームの切削には1/100mmの精度で切削が可能な3D切削機器を使用しています」
コンピュータ制御されたNC加工機を使うのは、メガネ産地の「鯖江」でも常識。そして、ここからが手作業が加わります。
「メガネの仕上がりを決めるのは、最後は人の手です。テンプルの削りや蝶判の埋め込み、磨きといった作業の1つひとつを職人が行います」
実はメガネの製造には200を超える工程があるといわれていて、とにかく手数が多いため「分業制」が一般的。それをひとりの職人が行うというのは、とんでもない手間と労力がかかるのです。ちなみに「めがね舎ストライク」には、比嘉さんを含めて2名のメガネ職人がいて、本場「鯖江」のメガネ職人から製造の技術を伝授してもらっているのだとか。それにしても、顔の3Dスキャンからメガネのデザイン提案、製造までやるなんて、1本のメガネをつくるための“本気度”が違いますね。
「はい、本気度マックスです(笑)。でも、いちばん大切なのはお客さんが望んでいるメガネをドンズバで提案できるかどうかだと思っています。だからこそデザインのために日数をいただいていて、メガネが完成するまでお店に3回は来てもらいます。月曜の夜にはバーもやっているので、お酒を飲みながら話をするのがいちばんわかりやすいんです。そのときにポロッと真理に近いことが見えてきたり。『あの人は普通がいいって言いながらも個性出したい人やし』みたいな(笑)。お客様のキャラを知るとより深い提案ができるじゃないですか。ちょっとしたサジ加減が見えると、それをメガネのデザインに落とし込むことができる。だから会話もかしこまらず、ホンマに遊びながら話しながらの感覚で、ビスポークのメガネをやっていきたいですね」
なるほど、要するに「対話」が大切ってことかな。
「ビスポーク」の語源は、「BE SPOKE」。つまりは、“対話しながらメガネを仕立てる”。これが「めがね舎ストライク」という店の本懐かもね。
<SHOP DATA>
めがね舎ストライク
- 住所 兵庫県神戸市中央区中山手通2-13-8 エール中山手ビル2F
- 電話 078-222-9889
- 営業 12:00〜20:00
- http://meganeya-strike.com/