特集:そうだ、あの人に会いに行こう。 file:12 opt duo・山岸 誉さん・毛利勝博さん・齊藤健志さん(後編)

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思う存分 メガネトークがしてみたい!

そうだ、あの人に会いに行こう。

メガネのことは大好きだけど、それ以上にメガネの話をするのが好き。
そこで、これまでお世話になった人や、自分が好きな人に会いに行き、
思う存分“メガネトーク”をするインタビュー連載を始めました!

file : 12 | opt duo 山岸 誉さん・毛利勝博さん・齊藤健志さん

(後編)

欧米は3プライスショップがあっても
高いメガネを買う文化が根付いている!?

イメージ画像 1 特集:そうだ、あの人に会いに行こう。 file:12 opt duo・山岸 誉さん・毛利勝博さん・齊藤健志さん(後編) 撮影:藤井たかの

価格を抑えたエイチ-フュージョン ライトのメタルフレーム「HFL-601 Silver」。価格は税抜き1万9000円。

引き続きオプト.デュオのデザイナーである山岸 誉さん(中)と、毛利勝博さん(右)、齊藤健志さん(左)に話を伺います。前編で価格を抑えたエイチ-フュージョンで若者需要を狙うという話が出ましたが、海外では3プライスショップってどうなんですかね?

毛利「日本では20代にとってセレクトショップは少し敷居が高くて、3プライスが主流になりがちです。でも、欧米や香港などは日本とはぜんぜん違って、若い20代が3万円4万円のメガネを買うような文化が根付いています」

欧米にも100ユーロや100ドル以下で買える安いメガネがあるのに、なぜ20代は高いメガネを買うの?

毛利「日本の3プライスはマーケティングが上手で流行を取り入れています。でも欧米の安いメガネはまだ流行を取り入れるまでにはいたっていません。ただ安いだけです。そして安いメガネが流行を取り入れる前に、高いメガネがトレンドだってことを定着させたんです」

3プライスが悪いわけじゃないけど、今はあまりに住み分けができてないかも。こないだメガネ好きを自称する編集者が、『ピー(自主規制)』の安いメガネを掛けてたんですが、それ『美味しい店を食べ歩くことがだけが生き甲斐なんです!』とか宣言しながら、『毎日、吉野家食ってるようなもんだよ』って、説教しときましたよ(笑)。

毛利「日本ではおしゃれな方でもメガネは3プライスって方が多いですが、欧米ではおしゃれな方が安いメガネを掛けていることは少ないです。それだけメガネ文化が根付いていると思います」

山岸「僕らがつくっているような“こだわりのあるメガネを掛ける方がダサい”という方向に少しずつなりつつある気はしています。人から聞いた話ですが、以前、ユニクロのフリースが流行ったときに、保育園で子どもたちがユニクロのフリースだらけになったらしいんです。そのなかでひとりパタゴニアのフリース着ている子がいて、その子が『お母さん、わたしもユニクロって書いているのを着たい!』って号泣したとか」

それはおかしい! むしろ自信をもってパタゴニアでしょう!

山岸「今の流れだったらメガネ業界にもそういうことがあり得ると、危惧するところはありますね」

ええ〜!! それヤダぁ……。そんなのまったく面白くない!

東京勢の新たな動きが生まれるなか
永遠のチャレンジャーでありたい

イメージ画像 2-1 特集:そうだ、あの人に会いに行こう。 file:12 opt duo・山岸 誉さん・毛利勝博さん・齊藤健志さん(後編) 撮影:藤井たかの

鯖江の若手世代を代表するオプト.デュオの3人。みなさんキャラクターや得意分野は異なりますが、目指すべきゴールは同じ。

せっかくなので地元「鯖江」の話も聞きたいです。ここに来る前に鯖江市役所を取材したのですが、鯖江の子どもたちは割とメガネ業界にネガティブなイメージがあると聞きました。

山岸「鯖江の子どもたちは『メガネの仕事は汚れる』とか、マイナスに思っている部分はあるかもしれません。景気に左右されるし、期日に追われているメーカーさんもありますし……」

齊藤「あえてメガネ業界を避けているところはあるかも。親が真っ黒な手で帰ってくるのを見ていたりするから、『こんな仕事はイヤだ』って思う子はいるでしょうね。うちは祖父がメガネの製造をやっていて、僕は小さいときからメガネが好きだったけど、イヤがっていた子はいました。あと、製造現場しか見ていなくて、完成したメガネにまで目がいってないんです」

完成品を知らないなんて、モッタイナイ! 鯖江発のブランドが海外でも評価されていることをもっと知ってもらわなきゃ。そういう意味では、オプト.デュオさんが毎年やっている「メガネデザイン授業(メガネコラム006参照)」とか最高ですよ。

山岸さん「僕らが中学校で授業をするときは、中田英寿さん(サッカー元日本代表)が来ましたとか、フランスに行っていますとか、あえて普段は言わないようなベタな話もします。そうやってメガネに興味をもってもらいたんです」

なるほど。ちなみに日本のメガネはハウスブランドが盛り上がった後に3プライスが来て、それからどうなんでしょうね?

毛利「個人的にはサラディストリビューションの三島 正くんとか、彼のような東京の方が仕掛けるのは、10年前はなかったと思います。これまではフォーナインズさん、ボストンクラブさん、金子眼鏡さんなどがあって、その後に僕らが続いて、鯖江が中心になって日本のメガネ文化を盛り上げてきました。でも流行の発信源はやはり東京。その意味では、“東京発”がやっと定着してきたなと。もし10数年前の時代に三島くんたちがいたら、日本も欧米のように3プライスに流れず、おしゃれな人たちが良いメガネを掛けていたんじゃないのかなって思うところはあります」

えぇ〜、それホントですか。

毛利「10年前はもっと業界に勢いがあったからあり得たかも知れませんよ。逆にこれからの若い子たちは、すでに確立されたハウスブランド+3プライスの文化も打ち破らないといけないので、僕らが出てきた時代よりたいへんかも」

まぁ、確かにいま音楽でミリオン売れって言われたら無理だし、「握手券」付けるわけにはいかないし……。となると、東京勢の若手に期待ですかね。最後にスペックエスパスがデビューして13年が経ち、もはや“若手”から中堅にさしかかろうとしていますが、そこんとこどうですか?

山岸「僕たちが目指すのは永遠の若手というポジションです(笑)。これからもずっとチャレンジャーの気持ちでいいものをつくっていきたいと思います」

インタビューを終えて。

個人的には山岸さんが話していたユニクロのフリースの話が驚愕でした。僕は常々、「メガネにこだわることがダサいという風潮になりつつあるのでは?」と思っていましたが、ブランドを手掛ける立場の方が同じことを思っていたのがちょっと驚きでした。あと3人を見ていると、毛利元就の「三本の矢」の話を思い出します。

メガネ連載